強引なカレの甘い束縛
言葉を濁した大原部長の様子から察することはできるけれど、やはりそうなんだ。
新しいプロジェクトが発足し、元山君が召集されることになるのだろう。
そうなれば完了するまでの期間、元山君が異動する可能性はほぼゼロになる。
大原部長が今はまだ何も口にすることはできない段階だとしても、あらかじめ元山君の耳にそれを遠回しに伝えておけば、元山君も婚約者も、何かを始めることも、終わらせることもできるはずだ。
大原部長がパティシエになるための学校のパンフレットを手渡したのも、「プロジェクトに召集するから、その間、やりたいことを我慢せず、積極的に動いても大丈夫だ」と伝えるためだったに違いない。
「元山君、良かったね。プロジェクトに召集されることが一番の目標だって言ってたし、異動までの時間が確保されたから、彼女だって動きやすいし」
「……そうだな」
渋々そう言った陽太を見れば、苦しげな表情を浮かべていた。
「あ、ごめんごめん。陽太が知っていても、プロジェクトのことは厳秘だもんね」
「まあな。元山のことよりもまずは俺たちのことだし」
「お、おれたち……」
「そう。お姉さんと忍さんに、結婚することを報告に行かなきゃな」
当然のことのように、陽太は頷いた。
たしかに、陽太の言葉はその通りで、近いうちに姉さんたちにも結婚を決めたことを報告に行かなくてはと思っているけれど。
「なんだか、今更って気がするのに、緊張する」
突然の言葉に焦った私は、手にしていた箸を箸置きに置いて、大きく息を吐いた。
私の唯一の身内である姉さんと、音羽家のみなさんにはしっかりと挨拶しなければならない。