強引なカレの甘い束縛


忍さんがそのことを話したがらないのを知っているせいで、簡単に口に出せない。

公香が乗っていた自転車を追いかけていて転んだというけれど、その原因はきっと、不自由な足のせいだろう。

足をひきずって歩く姉さんが無理をしたせいで、怪我をしたのかどうか……きっとそうだろうけど、そのことを聞きたいと思いながらもなかなか聞くことができない。

私を気遣う忍さんのことだ、もしそうであっても私の気持ちを考えて、本当のことは教えてくれないはずだ。

きっと、足のことを気にせず無理をした姉さんのせいだと言って、すぐに流してしまうだろう。

スマホを強く耳に当てたまま、どうしようかと悩んでいると、陽太が私の顔を覗きこんできた。

「何かあったのか?」

囁くような陽太の声に、小さく頷きながら、「ごめんね、ちょっと待って」と口ぱくで答えた。

陽太はそれに頷きながらも、心配そうに私を見つめる。

私は陽太を安心させるように小さく笑い、何度か呼吸を繰り返したあと、口を開いた。

「あの、忍さん……姉さんが転んだのはやっぱり足が……いえ、いいです」

結局、私は姉さんの足のことを聞けずに電話を切った。

弱虫。

意気地なし。

心の中で何度も自分にそう言って、不甲斐なさに俯いた。



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