強引なカレの甘い束縛
姉さんは「大丈夫。七瀬にお小遣いをあげるくらい、音羽家にはなんの影響もないから」とあっけらかんと言っている。
音羽家の嫁としての責任はちゃんと果たしているから平気だと胸を張る姉さんの言葉に嘘も誇張もないのはわかる。
けれど、仕事に就き、収入もある大人なんだからと断れば、今度は服や靴、化粧品。
物を直接送りつけてくることが増え、姉さんの過保護度は衰えることがない。
今も楽しそうに「そろそろ外商さんがうちに来るから、七瀬のスーツも揃えない?」と口にしている。
「姉さん、私のことはいいから、ゆっくりと体を休めて怪我を直さなきゃ。それに、私は自分のものは自分で買うから、気にしないで」
少し強い口調でそう言えば、姉さんは苦笑しながら「はいはい、わかってます」と言ってそれを聞き流す。
ほんとにわかってるのかな。
「あ、これも片づけなきゃ」
姉さんは、ソファの上にある服や雑誌を手に取る。
じっと見なければわからない程度のぎこちない足の動きを目にして。
私を追いかけて階段から落ちた時の怪我の影響が今も残っていと改めて気づく。
ひどい骨折をしたせいで、日常生活に支障はないとはいえ、多少の不便さはこの先も続くと聞いている。
姉さんがそのことで私を責めることはなく、それどころか、私へ向ける愛情はいっそう強くなっている。
あの日私がマンションから飛び出し両親と暮らしていた家に行ったのは、私がひとり暮らしの寂しさに耐えられなかったからだと誤解し、何度私がそれを否定しても悲しげに笑い、私にもっと甘えるように促す。
私をマンションにひとりで住まわせ、結婚して新しい家族とともに幸せになった自分を責めている姉さん。
私の姉という立場だけでなく、国内屈指の企業グループのトップである音羽家本家の嫁としての重責も背負っているというのに、今も尚、姉さんの私への愛情は度を越えて大きい。