強引なカレの甘い束縛
「え? 大人になったら誰でも上手にお料理が作れるようになるんじゃないの?」
「それは、まあ。練習しなきゃ、大人でも無理かな。だけど、公香もお母さんに教わって練習したらおいしいオムライスが作れるようになるよ」
「ほんと? じゃあ、ななちゃんのお母さんがおいしいオムライスを作れなかった代わりに公香がななちゃんに作ってあげる」
公香は、いいことを思いついたとでもいうように大きな声をあげた。
姉さんに「ね、いいでしょ?」と言って、頭を撫でてもらうと、くしゃりと笑顔を作る。
母娘が顔を見合わせて笑っている様子に、私はふっと息を吐き出した。
母さんに作ってもらえなかったのはオムライスだけじゃない。
スパゲティもカレーライスもハンバーグも。
子どもの大好物であるメニューのどれひとつ、作ってもらった記憶がない。
大抵は姉さんが作ってくれるか買ってきたものを食べていたっけ。
すると、私と同じことを思い出したのか、姉さんが公香の頬をするすると撫でながら口を開いた。
「ななちゃんはオムライスだけじゃなくてハンバーグもカレーも大好きだから、いつか公香が作ってあげてね。あ、陽太君の好きな焼きそばも作れるようになったら最高だね」
「うん。公香、頑張るよ」
「じゃあ、公香のために、お母さん、エプロンを作ってあげるね」
「ほんと? ひつじさんのエプロンにしてね」
「はいはい。……そんなにひつじさんのことがすきになっちゃったのね」
ふふっと笑う姉さんと、公香。
公香が姉さんに似ているのは顔だけじゃない。
優しく転がすような声も、姉さんの声と似ていて、最近では電話越しの公香の声が姉さんの声のように聞こえる。
今も、公香の笑顔に、姉さんの笑顔がだぶって見える。