強引なカレの甘い束縛
音羽家に嫁ぎ、愛する家族を手に入れた姉さんは、とても幸せだ。
姉さんひとすじの忍さんの重すぎる愛情に右往左往させられることはあれど、子どもの頃に手に入れることができなかった愛情も一緒に手に入れたようだ。
音羽家のような裕福で歴史ある家柄に嫁ぐことの大変さを差し引いても、姉さんが今手にしている家族や愛情は大きい。
けれど、姉さんは私のことを負い目に感じ、その幸せに引け目も感じている。
就職が決まったと同時に家を出てひとり暮らしを始めた姉さんは、ようやく両親から解放され、自分が望む毎日を送ることができるようになった。
引っ越しばかりを繰り返し、不安定な毎日から諦めに似た思いを抱いていた長い時間を切り離し、地に足をつけた安定した生活を手に入れたのだ。
そしてそれは、私ひとりを両親のもとに残すということでもあった。
まだ学生だった私には両親のもとを離れてひとりで暮らす選択肢はなく、ようやく自由を手に入れた姉さんの家にお邪魔するのも気が引けた。
だから、あと数年、自立できるまでは両親とうまく付き合っていこうと思っていたけれど、その計画はあっけなく頓挫した。
高校を辞めさせてまで引っ越しを強行しようとした両親に、私の頑張りは限界を迎えて笑えなくなるほどのダメージを受けた。
その後就職して、忍さんが用意してくれたマンションで暮らし始め、姉さんからの強い干渉ともいえる気遣いを重荷に感じた私はマンションから逃げ出した。
そして、階段から転げ落ちた。
この二度の出来事が、姉さんに強い後悔の念を抱かせたのだ。