強引なカレの甘い束縛
『私が七瀬のそばにいてあげれば、七瀬が傷つくこともなかったはず』
何度、そう言って苦しげな笑顔を向けただろう。
今では公香と唯香の世話が忙しく、自分を責める機会は減ったけれど、それでも、私への罪悪感は消えていないようだ。
そんな罪悪感、間違っているのに。
高校時代は、私が両親に強く自分の気持ちを言って、引っ越しは嫌だと説得すればよかったし、音羽家からのサポートを遠慮したいのなら、しっかりとその想いを伝えて自分で生きていく道筋を考えれば良かった。
私に起こった出来事は、すべて自分の甘さと弱さが招いたこと。
何度もそう言って姉さんにわかってもらおうとしたけれど。
『それでも、七瀬が悲しい想いをしたことに変わりはない。私にできたはずのことをしなかった責任も、変わらないのよ』
さすがあの両親の血をひいているだけあって、姉さんも頑固だ。
自分の責任だといって、私のことを絶えず気にかけている。
というよりも、必要以上に気にかけている。
「あ、公香が大好きな、もちろん七瀬も大好きなフルーツゼリーをもらったから冷やしてあるのよ。ちょっと待っててね」
今も、公香だけでなく私のことも子どものように心配し、気遣ってくれる。
「ぶどうのゼリーと桃のゼリー、どっちがいいかな」
冷蔵庫に向かって歩く足元は、ひょこひょこ不安定で、かすかにひきずっている。
姉さんが私を傷つけたことで自分を責めるのなら、私は姉さんの足に一生残る傷を残してしまった自分を責めている。
公園で走り回る子どもたちを追いかけることもできないし、運動会の親子競技に参加することも無理かもしれない。
私の責任と罪悪感のほうが、よっぽど大きい。
けれど、姉さんは自分の不甲斐なさと責任ばかりを抱え、私への罪の意識に苦しんでいる。
もう二度と私が苦しむことがないよう、逃げ出すことがないよう、精いっぱいの想いをこめて気遣っているのだ。