強引なカレの甘い束縛
その象徴が今住んでいるマンションだ。
正確な販売価額は聞いていないけれど、ゼロが八個並ぶのではないかと思っている。
二十代のOLが住むには非現実的なマンション。
音羽家の財力をどんと見せつけられたようで遠慮しないわけではないけれど。
華やかな内装、セキュリティ面に文句のつけようがない高級マンションだ、住みたくないわけがない。
それに、私が住むことによって、姉さんが私への罪悪感を減らし、少しでも穏やかに過ごしていられるのならと、ずっと住み続けている。
高校生でも、社会に出たことがない世間知らずでもない今なら、自分が置かれた状況を強い気持ちで受け止められる。
二度と心を病んだり、家を飛び出したりしないのに、姉さんにとって私を手離すことは恐怖以外の何ものでもない。
そんな姉さんを説得して自立するべきだとわかってはいても、姉さんを傷つけてしまった罪の意識が私にもあり、無理を言ってまで押し通せない。
結局、私も姉さんもお互いへの申し訳なさに縛られて、身動きが取れないままだ。
だけど、陽太が何度か口にした「俺がいる地上に降りておいで」という言葉が、頑なに現状維持を意識しながら暮らしていた私の心に風穴をあけた。
そう。
両親に振り回されていた子ども時代の苦しみを盾にして、長い時間、仕事にもプライベートにも変化を持ち込みたくないと強がっていた。
その強がりは私の本音ではなく、姉さんを傷つけてしまった自分に気づかないふりをするための防御以外の何ものでもない。
これ以上姉さんを傷つけないよう、そして、自分がこれ以上感情に任せてバカなことをしないよう、無意識のうちに自分に仕向けた感情の操作だ。