強引なカレの甘い束縛
だけどこれ以上、姉さんの大切な時間や、本来なら忍さんや公香、そして唯香に注ぐべき愛情を私に分けてもらうわけにはいかない。
「私はちゃんとやってるから、姉さんは、公香が大好きなご飯をいっぱい作ってあげてよ。……ね、公香」
ほんの少し沈んだ空気を明るく変えるようにそう言えば、無言のまま私を見つめる姉さんの横で、公香が「やったー」とはしゃぎだす。
「公香、ブロッコリーがいっぱいのシチューが食べたい。お母さん、明日作って。今日はおばあちゃんが陽太君が大好きなお料理を作るって言ってたから……あ、そうだ」
何かを思い出したように、公香が大声をあげた。
「え、どうしたの?」
姉さんが、公香の顔を覗き込む。
「あのね、陽太君が大好きなアイスを買いに行きたい」
そう言うと、椅子から降りた公香はとことこと歩き、リビングの入口にかけてある手提げかばんを手にとり、振り返った。
「陽太君、公園の近くのお店のチョコアイスが大好きだから、買いに行こうよ」
今にもリビングから駆け出しそうなほどいそいそとした様子でそう言うと、飛び跳ねながら「早く、早く」と私たちを急かす。
「陽太と食べたことがあるの? えっと、そのチョコアイス」
公香の言葉に促されるように腰を上げ、私はソファに置いていた鞄から財布とスマホを取り出した。
「この前、お母さんが唯香と一緒にお昼寝してるときに陽太君が散歩に連れて行ってくれたの。そのときに唯香には内緒だよってふたりで食べた。陽太君大好きって言ってたから買ってあげたい」
「そっか。公香と陽太の秘密なんだね」
「うん。絵本も買ってくれたよ。もう少し唯香が大きくなったら読んであげられるように一緒に練習中なの」
「公香はいいお姉さんだね。もう少し唯香が大きくなったら絵本を読んであげたり、陽太と一緒に散歩したりできるね」
「へへ、お姉さんだもん」
うれしそうに笑う公香の頭を撫でてあげれば、照れたようにぴょんぴょん跳ねている。