強引なカレの甘い束縛


大きな家に比例した広いキッチンはアイランド型で使いやすそうな調理器具がたくさん揃えられていた。

ひとり暮らしで毎日自炊している私が欲しいと思っているものもいくつかあった。

コンロの上の棚に置かれている圧力鍋もそのひとつで、思わずじっと見てしまう。

たしか、薫さんはお料理が苦手だと聞いたけど、調味料ラックに並ぶ調味料の種類の多さや食器の数。

どれをとってもお料理が得意だとしか思えないんだけど。

「あ、薫さんじゃないよ、大原部長がここでお料理の腕をふるうのよ。
さっきバーベキューの準備の段取りは悪かったけど、お料理の腕は抜群なの」

「え、大原部長が、ですか?」

「そう。毎日仕事でストレスがたまるから、お料理で気分転換をするの。私も何度かここに呼ばれてごちそうになったけど、SEなんてやめてシェフになればいいのにって思うくらいおいしいよ」

まさか、大原部長が。

いつも部下に厳しくも優しい言葉をかけ、仕事には一切の妥協を許さない大原部長に、仕事以外に心を向ける余裕があるなんて驚きだ。

どちらかと言えば実務からは離れた管理職だというのに、かなりの仕事量を抱えて先頭に立っている。

帰りも遅いのに、お料理までだなんて、驚きとともに、いい旦那さまだなあと思う。




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