強引なカレの甘い束縛
できればずっと、この家でなんの変化もなく暮らしていきたいのだ。
もう、自分の生活圏が変わって苦労するなんてことはしたくないから。
何度も転校し、そのたびに新しい環境に順応するための苦労をし、それに慣れた頃には両親の気まぐれによる次の引っ越し。
ようやく仲良くなった友達ともお別れしなくてはならない。
何度かそれを繰り返せば、自分には長く付き合える友達をつくることも、腰を据えて自分が住んでいる地域に馴染む努力をすることも諦めるようになる。
どうせすぐに離れるのだと思えば、どこにいても愛着をもつことができなくなり、人間関係を広げる努力をすることもなくなる。
既に仕事に就いてひとり暮らしをはじめていた姉さんはそんな私を絶えず心配していたけれど、あることをきっかけに私を引き取ってくれた。
『これからは七瀬とふたりで暮らすことにするから、父さんと母さんは自分の行きたいところに行っていいよ。私と七瀬にだって、自分が望む人生があるんだから、ふたりの勝手な思いつきに巻き込まないで』
私よりも八歳年上の姉は、どちらかというと両親の性格を寛容に受け止め、学生時代を引っ越しと転校に費やしながらもそれなりに楽しんでいたらしい。
少なくとも二年に一度は引っ越しをし、新しい家で新しい生活を始めることに抵抗を覚えつつも子どもひとりが自分の力だけで生きていくことなどできるわけもない。
そんな自分の状況を冷静に受け入れ、渋々ながらも両親の意のままに各地を転々としたらしい。