今、鐘が鳴る
碧生くんは、ベンチに座ってる私の前に片膝を付いて、私の手を取った。

もう何度めになるのかわからないけれど、プロポーズ?
今度こそ、ちゃんと「はい」って言わなきゃ。
身構えた私の顔を見て、碧生くんはクスッと笑った。

「ごめん。間抜けなことに、指輪、持ってきてないんだ。」

……また、タイミングが合わなかった。
明らかにガッカリした私に、碧生くんはもう一度
「ごめんね。」
と言って、私の手の甲に口付けた。

「ホワイトデーに改めてプロポーズさせてもらうよ。予約しとく。」
……既にいくつも立派な立爪リングをもらってるんだし、別に今さら指輪がなくっても全然かまわないのに……そこは、私にはよくわからない碧生くんのこだわりなのよね。

ため息をついてから、無理に微笑んでみせた。
「わかりました。お待ちしてます。……でもプロポーズですらこんなにもタイミングが噛み合わないと、本当に結婚できるのっていつ頃になるのか心配ですわ。」
意識したわけじゃないけれど敬語になった私に、碧生くんは苦笑した。

私の手を取ったまま、隣に座る碧生くん。
「結婚したい?すぐに?」

……さすがにそんなにあからさまに聞かれると、返答に困る。
てゆーか、それに同意するのと、プロポーズとどう違うというのかしら。

返事をしない私の頬に軽くキスしてから、碧生くんは問うた。
「日本ではプロポーズがイコール婚約じゃなくて、結納が婚約になるの?大体、半年から1年未満って聞いてるんだけど、そんなもん?」

……そうなるのかしら?
「たぶん。でも結納なしでしょ?碧生くん。」

碧生くんは、うーんと少し考えた。
「俺の両親に日本に来てもらうってのはたぶん無理だと思う。ごめん。でもおじさまやおばさまにわざわざL.A.に来てもらうのは、本末転倒だよな。……ちなみに、アメリカの婚約期間の平均は2~3年。」

ええ!そんなに!?
悲しい顔になった私を碧生くんは目を細めて見た。

「結婚したい?すぐに?」
さっきと同じ質問をされたことに気づかずに、私はうなずいた。

碧生くんは満足そうに笑って、私を抱きしめた。
「百合子、かわいい。ほんっとに、うれしいよ。」

……やっぱりプロポーズと同じことだと思うんだけど……。

意思疎通と儀式の違いなのかしら?

よくわからないけれど、碧生くんの笑顔がうれしいので、私も自然と笑顔になった。
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