秘密の片思い 番外編④
敵わないな。というように郁斗は笑った。


「じゃ、碧とシートにいて。ちょっとトレーニングしてくるから」

「うん」


郁斗は少し離れたところに立つと、ボールを蹴り始める。架空の相手が目の前に立ちはだかっている想定らしく、ボールを右、左に細かく動かしている。

碧生はシートの上にちょこんと座って、郁斗がちゃんと用意してきた白湯を哺乳瓶で吸っている。

私は涼子からもらった『サンウォーク誌』をバッグから出してパラパラ見始める。


ずいぶんモデルさんも変わってる……。


ちょっと雑誌に見入ってしまっていたのだろう。ふと隣にいる碧生を見ると、いたはずの彼はそこにいなかった。


「碧っ!?」


トレーニング中で背を向けている郁斗の方へ、碧生はヨタヨタと歩いていくところだった。

背を向けている郁斗は気づかず、このままいったらぶつかってしまうと、立ち上がって駆け出した。


「郁斗! 郁斗っ! 碧がっ!」


郁斗と碧生がぶつかったら……そう思うと、心臓がバクバクして緊張が走る。


< 12 / 16 >

この作品をシェア

pagetop