君を選んだから
「ここ来るの、今日で最後?」

「うん。」

「せっかく会えたのに、なんか寂しいな。」

「そうだね。」

「一緒に働けて、すごく楽しかった。あおいも大人になったんだなって。」

「それは、私も同じだよ。」

「この前さ、須賀くん、機嫌悪くなっちゃったみたいだけど、大丈夫だった?」

「大丈夫じゃなかった。」

「そうか。」

「でも、お陰でよ〜くわかったかも。やっぱり、この人、放っておけないなぁって。」

「..........。」

「何がとか、どこがって言われちゃうと難しいけど、私、やっぱり、須賀くんを諦められないの。入社からずっと一緒にいたから、どうしても一人にしておけないの。」

「そうか、わかった。仕方ない。」

「..........。」

「最初からわかってた。須賀くんから、お前だって知らないで、同期の女の子の話、聞いてる時から。この二人、両思いなんだろうなって。」

「そうなの?」

「お前に会えて嬉しくて、須賀くんと仲良くしてるの見て嫉妬した。それで俺もちょっと暴走しちゃったかな。」

「匡史.......。」

「俺はとにかくあおいに幸せになってほしい。それが一番の願い。だからさ、頑張れよ。」

「うん。ありがとう。」


人の目がないのを確認して、匡史の頰に軽くキスをした。

匡史は笑って、一瞬だけギュっとハグをしてくれた。


かつて愛した元カレは、本当にイイ男になったと思う。

匡史のおかげで、頑張るための勇気が湧いて来た。

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