エリートな彼と極上オフィス
『俺が悪いよ、そのくらいわかってる。謝罪は聞きたくないってんなら、聞いてくれるまで我慢する。でも話くらいさせろよ、じゃなきゃ進まない』
『話とは』
『お前が…どんな気持ちなのかとか、そういうことだよ』
それこそ、今ここで話したところで、何かが進むとは思えない。
先輩はいったい、私からどんな言葉を引き出したいのか。
『私の気持ち、ですか』
『そう、なんか俺に言いたいこととか』
『この話はしたくありません』
以上です。
ぴしっと言うと、先輩の顔に絶望が浮かんだ。
何か言おうとして、あきらめたように息をつくと、力なくデスクに腰を下ろす。
スーツの前を開けているので、そんなふうにすると、ウエストから腿のあたりまで、身体のラインがはっきり出る。
これまでなら、スタイルいいなあ、で済んでいた光景だけど、服の下に隠れている肉体がまざまざと思い出される今、自分の視線が泳ぐのを感じた。
『ひとつだけ、教えてもらっていいか』
先輩の声は真剣そのもので、緊張に満ちていた。
今度はなんだ、という思いで、はい、とうなずくと、先輩は落ち着きなく、スラックスで手をこする。
こくりと喉が鳴る音で、私にまで緊張が伝わってきた。
──俺、ちゃんとつけてた?
「どこまで行ってたの、千栄乃」
「え、スーパーだよ、そこの」
「いつまでたっても帰ってこないから、迷子になったかと思った」
なるか、こんな地元で。
母親がエプロンで手を拭きながら、私の買ってきたみりんとお餅を確認する。
「よくできました、お小遣いあげよか」
「ちょうだい」
手を出すと、お釣りの中から500円玉を乗せてくれる。
やったあ、と喜ぶ私に、ため息が降ってきた。
「そろそろ親にお小遣いをくれてもいい頃なんだけどね」
「気持ちはあるんだけど、おこがましくて」
「お調子者」
「遺伝だね」