エリートな彼と極上オフィス
千明さんの言は、ついに先輩の理解を越えたようだった。

「???」と顔に書いて、私を見る。

いや、これは私の手にも余る。



「うーん…例えばですね、仕事で何か意見が欲しかったら、私に相談することもあるでしょう」

「まあな」

「じゃあもし私が彼女だったら、かの…」



素晴らしい響きに、ふふ、ともへへ、ともつかない笑いが漏れたのを、先輩が、不気味、と一蹴した。



「自分で言っておいて想像で笑うな」

「失礼しました、私が彼女だったらですね、同じように相談しますか?」

「できなくなるのが嫌だから、彼女にしたくないんだって」

「ほら、それだ」



最後のは千明さんの声だ。

我が意を得たりとばかりに指を鳴らす。



「なんでそう、"彼女"の役割を無理に限定するんだ。いいじゃないか、仕事のことも相談できる彼女がいたって」

「でも、それは逆に、彼女じゃなくてよくねえ? なんでわざわざややこしくすんの?」

「お前の妙な分業制のほうがややこしいわ、ボケ」



一向に理解の進まない先輩に、千明さんも焦れてきた。

そして私のほうは、ちょっとわかった気がした。



「たぶん先輩のその状況は、人間関係に恵まれて、女の子にも不自由しなかったことの、弊害ですね」

「何それ、湯田ちゃんの考察?」

「です。先輩は家族も友達にも満たされていたせいで、一番後に構築される“彼女”という関係に求めるものが、最初から極端に狭かったんですよ」

「要するに、メスとしての機能さえ果たしていればよかったってわけだね」

「です」



そして、それでもいいという女の子が溢れていたのもまた悪かった。

もっと踏み込ませてよ、と言われることもなかったのだ。

もしくは言われても、聞いていなかったか。



「俺のせいじゃないってことだな」

「お前はもう少し、危機感を持て」

「危機感てなんだよ」

「誰かに湯田ちゃんを取られても知らないぞ」

「誰かって」

「俺とか?」


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