エリートな彼と極上オフィス
「俺のお袋の話、したろ。姉ちゃんとは種違いで、俺は親父を知らないし、でもうちに父親がいなかったかっていうと、違うんだ」
「え?」
「母さんの彼氏っていうか、その時々の相手が父親代わりをしてくれてた。みんないい人だった、もちろんいない期間もあった」
「それはちょっと、あのう、変わった環境ですね」
今頃気づいたみたいに、だよなあ、とうなずく。
「たぶんお袋は、いわゆる恋愛体質だったんだな、男がいないと生きていけないタイプ」
「ははあ」
「まあそれは置いといて、俺はそんな母親を見て育ったから、恋愛ってそういうもんだと思ってたんだ」
「そういう、とは?」
「一過性っていうか、時が来たらどっちかの気が変わるなりなんなりして、半自動的に終わるもんなんだと」
コメントに困った。
えーと。
私が言うことではないかもしれませんが、お母さんだって決して、そんなつもりで個々の恋をしていたわけじゃないと思いますよ。
いつだって終わりは悲しくて、始まりはふわふわ浮き立つ思いだったはずだ。
そうなんだろうな、と先輩が素直に同意してくれたので、私はなんだか申し訳ないような、切ないような気持ちに襲われた。
「まあ何を言いたいかと言うとだ、お前を見てて、変わんないこともあるんだなあと、ちょっと感動したわけ、俺は」
「そう簡単に変わらないですよ、私は。少なくとも一年くらいじゃ」
先輩は私を見つめて、穏やかに微笑む。
「お袋は、最後も男絡みだったんだってさ。女二人で一人の男取り合って、私と一緒になってくれなきゃ死ぬーって」
「え、それで…実際?」
「姉ちゃんが言うには、自分に酔うタイプだったから、ヒロインとして逝けて本望だったろうって。俺にはよくわかんねえんだけど」
私にはちょっと…わかるかもしれない。
きっとどんな形であれ、強烈にその人の心に残りたいと思ったのだ。
もしかしたらこれは女特有の心理なのかもしれず、先輩は、さあ、と首をかしげる。
「とりあえず、女って強いなあと」
「そんな結論ですか」
「お前も入ってるよ」