エリートな彼と極上オフィス
驚きのあまりか、かなり品性に欠ける物言いになった千明さんを、しかめ面で先輩がにらむ。



「だってどうやって断んの?」

「どうやってって」

「いい断り方あれば教えてくんない? 俺も正直、今じゃねえなって時、あるんだよ」

「断れないからやってんの、お前」

「そういう言い方されると」



先輩は私たちの引き具合をなんとなく感じるのか、居心地悪そうに身じろぎした。

千明さんが呆れ声を出す。



「お前、あれか、女友達に流されるままそういう関係になった結果、友達にも戻れなくなって殴られるタイプか」

「ほんとそれ」



理解者を見つけたとでも言いたげに、ほっとした顔で先輩がうなずく。

けど、すぐに冷ややかな二組の視線に気づいたらしく、あれ、と遠慮がちに我々を見た。



「やっぱ俺がダメなの」

「いや、話だけ聞いてると、お前のほうが被害者みたいに思えてくるから不思議だよ」

「そんなふうには思ってないけど」



もしかして私、あれだけきっぱりごめんと言われたことを、かえって喜んでいいのだろうか。

ある意味、特別扱いなのかもしれない、先輩なりの。



「でも俺、女の子のいる店とかも、行かないぜ」

「知ってる、営業部時代にお前がソープから脱走したって話、有名」

「だって無理やり連れてかれてさ、俺ほんと、ああいうのダメなんだよ、もう雰囲気だけで無理」

「まあそこは評価してやってもいいのかもしれないが、それとこれとは別の話な」



マジかよ、とすねたように先輩が頬杖に顔を埋める。

どの部分に関して我々が引いているのか、本当に理解できていないらしい。


いかん。

この人、思っていた以上に厄介かも。

< 41 / 186 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop