エリートな彼と極上オフィス
『なんでまた?』
『桃と梨は経験があり、冷えてるほうがおいしい果物は狩ってもその場で楽しめないと学びました、むくの面倒だし』
『種類の問題じゃねーよ、なんで果物狩りなんだって話』
『程よく時間がつぶれ、お腹もふくれ、会話がなくても間が持てないってこともなく』
『初対面か、俺らは』
怪訝そうにしながらも先輩は、東京の奥地で一日遊び倒すプランを練ってくれた。
なんと、雨の場合に備えてのサブプランつきだ。
『レンタカーか千明の車を借りようか迷う』
『私はどちらでも』
『涼しければ、バイクが気持ちいい場所だよなあ』
『先輩の後ろで風になりたかったですー』
『あれ、ぼけっとしてられたら困るんだぜ、鈍い子乗せると、もうほんと、おーい勘弁してくれよって感じでさあ』
たまに無性に食べたくなると意見が合ったファーストフード店で、煙草を吸いたそうにストローをくわえて、先輩がぼやく。
つまり、ちょっとトロい女の子を乗せたことがあると。
引きこもってはいなかったものの、そんなきらきらした学生生活とは縁遠かった私に、先輩はまぶしい。
そんなまぶしい先輩が、なぜか私のために休日を費やしてくれるという。
『記念すべき初デートですねえ』
『そーだよ、気合い入れて来いよな』
『勝負下着で行きます』
そこまではいい、といきなり恥ずかしそうにうつむかれてしまうと、ボケた私の立場がなくなる。
ちょっと、しっかりしてくださいよ、もう。
『あとは、いつにするかですね』
『ま、このあたりかな』
手帳を見ながら、くるくると二週分の土日を指す。
お互いの予定も加味し、候補はそのうちの三日間となった。
そこまではうまくいっていた。