エリートな彼と極上オフィス
『半日だけでも空かないの』
『無理』
な、と先輩が私を見たので、ぎょっとした。
わ、バ、バカですか先輩。
ここでわざわざ、いらん口火を切らなくても。
予想どおり、中川さんは私に、小動物くらいなら気絶させられるであろう視線をくれた。
これ絶対、爆発物が送られてくるコースだ。
だが白状しよう。
この時私は確かに、心の奥で芽吹く優越感を意識していた。
だって先輩が私を優先してくれた。
それをきっぱりと表明してくれた。
そんな純粋で、歪んだ喜び。
そして私は、判断を誤った。
正確に言うと、調子に乗った。
『いいですよ、私はまた別の日で』
『でもさ』
『他にも候補日、ありますし』
先輩は、でも、と迷っているふうを見せる。
『いいって言ってくれてるんだから、いいじゃん』
『まあ…』
親しげに叩かれた胸を見下ろし、やがて先輩が、ためらいがちにうなずいた。
『湯田がいいなら』
でね。
私にはしっかりと、いい気になったバチがあたったのです。
残った候補日のうち一日は先輩に仕事が入り、最後の一日は記録的な台風で、当日を待たずにもう、これは無理だとなった。
先輩が中川さんの家に行った日は、まれにみる晴天。
吠えたいようなこの思いを、どこにぶつけたらいいのやら。