エリートな彼と極上オフィス
こういう予定をリスケしようとして、繰り返すほどに「なんかもう、よくね?」と熱意が枯れていく経験を、どなたもお持ちだろう。

私はそれが怖くて、別の候補日を決めましょう、と言い出せなかった。

ベストコンディションの日に別の予定を消化してしまった負い目でもあるのか、先輩からもそんな話は出なかった。


結果、初デートは自然消滅。



──からの、やさぐれ。

というわけ。



「おい、降りるぞ」

「はっ」



ぼんやりしていたところを、鞄で小突かれた。

見れば電車はすでに、目的駅に停車している。


慌てて降りたら、先輩の踵につまずいて転んだ。

運悪く点字ブロックに膝がめり込み、悶絶するほど痛い。



「何やってんだ」

「すみません」



さすがにしょげる私の顔を、手を貸してくれた先輩が覗き込む。



「あのさ…」



何を言おうとしたのか、言葉を途中で飲み込んで、黙ってしまった。



「はい?」

「いや、いいや、行けるか」

「平気です」



ストッキングが破けていないのを確認し、私は出口に向かった。



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