エリートな彼と極上オフィス
もー、と憤慨した声が上がる。
わかる、この会社の縦割りっぷりはなかなか徹底しており、周囲の部署の情報は、基本入ってこない。
「そちらはもちろん拡販目的ですが、お客さまから見て、メーカーコンテンツが乱立するのもですね」
『もちろん避けるべきね、情報をありがとう、販促と話してくるわ、また何かあればご相談します』
「お待ちしてますー」
無駄に緊張感のあった会話は、なごやかな雰囲気のうちに終わった。
あろうことか互いに有益でもあった。
なんだ、ちゃんとした人じゃん。
そりゃそうか。
とりあえず、妙な失態やバカを晒さずに済んでほっとした。
よく考えると、私がこんな心労を負うのも理不尽な気がしてくる。
(先輩が悪いんですよ)
あっちにもこっちにもいい顔して。
それがほんとに自然体だから、やきもきするのは周りばかりで。
わかりやすいくせに、何考えてるのかさっぱりで。
長く会っていないせいか、不満ばかり募る。
ああ、会いたいなあ。
会社終わりにエントランスを出たところで、湯田、と呼ばれた気がした。
また呼ばれる。
きょろきょろしてみて、声の主を発見した。
通りの向かい側から、日の暮れた都心をバックに道を横切って駆けてくる姿。
ガードレールを軽々とまたぐ様子は、欲目なしにかっこいい。
「おー会えた会えた、やった」
上着を片手にかけて、息を切らしてる。
背後のコンビニの店頭に、ぽつんと佇むスーツケースは、まさか放り出してきたのか。
そこまでしなくても私、逃げませんて。
「直帰じゃなかったんですか、先輩」
「会社には寄る気ないけど、はい土産」
わかる、この会社の縦割りっぷりはなかなか徹底しており、周囲の部署の情報は、基本入ってこない。
「そちらはもちろん拡販目的ですが、お客さまから見て、メーカーコンテンツが乱立するのもですね」
『もちろん避けるべきね、情報をありがとう、販促と話してくるわ、また何かあればご相談します』
「お待ちしてますー」
無駄に緊張感のあった会話は、なごやかな雰囲気のうちに終わった。
あろうことか互いに有益でもあった。
なんだ、ちゃんとした人じゃん。
そりゃそうか。
とりあえず、妙な失態やバカを晒さずに済んでほっとした。
よく考えると、私がこんな心労を負うのも理不尽な気がしてくる。
(先輩が悪いんですよ)
あっちにもこっちにもいい顔して。
それがほんとに自然体だから、やきもきするのは周りばかりで。
わかりやすいくせに、何考えてるのかさっぱりで。
長く会っていないせいか、不満ばかり募る。
ああ、会いたいなあ。
会社終わりにエントランスを出たところで、湯田、と呼ばれた気がした。
また呼ばれる。
きょろきょろしてみて、声の主を発見した。
通りの向かい側から、日の暮れた都心をバックに道を横切って駆けてくる姿。
ガードレールを軽々とまたぐ様子は、欲目なしにかっこいい。
「おー会えた会えた、やった」
上着を片手にかけて、息を切らしてる。
背後のコンビニの店頭に、ぽつんと佇むスーツケースは、まさか放り出してきたのか。
そこまでしなくても私、逃げませんて。
「直帰じゃなかったんですか、先輩」
「会社には寄る気ないけど、はい土産」