甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

「え? 一人? はい。一人で走ってるけど」
「実は、自分、ランニングのサークルに入ってて。もし興味あったら是非」
「サークル?」
「はい。あ、男女混合で、少し男のほうが多いかな。二十代から三十代くらいまでいますし。練習会とか、あと大会一緒にエントリーして走ることもあれば、それとは関係なくバーベキューとかしたりしてます」
「そんなのあるんだ」
「はい。気が向いたら、是非」
じゃあ考えてみると伝えようとすると、隣にいた若槻が
「えー。すごい楽しそうですね。小千谷さん、連絡先聞いておいたほうがいいんじゃないですか。あとで入りたいとか思っても、連絡先わかんないと入れないし」と横から口を挟む。
「あ、そうですよね。じゃあ」と綾仁くんは躊躇いもなく連絡先を教えてくれた。

美人って受け身だと思っていたが、若槻は行動力があって驚く。
帰りにそれを伝えると
「だってやらない後悔って一番したくないじゃないですか」
とサバサバ答えるのが男前で、若槻の知らない一面を見てすごいと感心する自分がすごく小さく感じた。

モテる人だって、そうなるように動いているのに、モテない自分は動くことさえ諦めて、結局その通りになるだけだ。
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