甘いだけの恋なら自分でどうにかしている

店に着いてから気づいた。
彼女、大丈夫かな。って課長がはっきり言わないから私がいちいち気にしてしまう。
誘ってきたのは課長だし、いいってことなんだろう。
注文を終えると、綾仁くんからメッセージが届いた。

『今週の日曜日、サークルの練習会があるんですけど参加しませんか?』
「サークルか」と呟いてしまう。
誘われたのは嬉しかったけど、参加する気は正直湧かなかった。たぶん、朝のあの空気を一人で感じていることが好きなんだと思っているからだ。
でも始めてもないことを拒むのもおかしいし。
そう判断することを嫌っているから、自分で自分の首を絞めてる感じになり苦しい。
こんなことさえ決断できないなんてな。
綾仁くんと仲良くなれたら嬉しいなと思っていることも、余計判断を迷わせている。
若槻の行動力を思い出し、比べて段々気持ちが暗くなってしまう。

「サークル?」
「あ、はい。ランニングのサークルに入らないかって誘われまして」
「ふうん」
「あ、興味ないって顔に出てますよ。ていうか私、たまに思うんですよ。どうして課長が営業の仕事をしているのか不思議だなって。明るさとかなんて言うんですか、人なっつこさというか、そういう感じがないじゃないですか」
「愛想ふりまけば、自分を受け入れてもらえるし、尚且つ営業の成績に繋がると思ってること自体がおかしいと思わないのか」
「……はい、そうですね。そうです。まあ、人それぞれですよね。同じように仕事をしているようで、実はみんな別のステージの上にいて……それで仕事をしているからうまくいったり、いかなかったりするんでしょうね。だから悩んだり悩まなかったりするんでしょうね」
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