クールな同期が私だけに見せる顔
酔いは、一度に醒めてしまっていた。
足元はふら付くけど、帰れなくはない。
怒り狂った男に抱きかかえられて、彼の部屋で一晩中説教なんて、絶対に嫌だ。
彼は、私の気持ちを察したのか、私を自分の胸元にぐいっと引き寄せた。
逃げるなんて思うなよ。そう言ってるみたいに。
私の意見にまったく耳を傾けるつもりはない。
と言わんばかりに私を抱え込んだまま、ホテルのロビーに出て、ドアボーイを呼び止めた。
省吾は、ドアボーイにタクシーを手配してもらうように言うと、私の頭にあごを乗せて、もう一度ぎゅっと抱きしめた。
傍から見たら、片時も離れたくないっていうカップルみたいに見える。
彼は、私をつかまえたまま、車が来る方角をずっと見つめていた。
タクシーが来ると、彼は私に先に乗ように言った。
乗る前に逃げ出すのは、不可能のようだ。
彼は、不愛想で不機嫌な声で、運転手さんに住所を告げると、再び窓の外を見て黙り込んだ。