クールな同期が私だけに見せる顔
「ちょ、ちょっと待ってよ。
こっちに来てもらっても、無駄だから……」
「分かってるって。俺が勝手に行きたいと思ってるだけだから。
無駄足になってもいいんだ」
「それじゃあ、勝手にすれば……」
「ん、そうする。じゃあな……」
電話を切った後、隣に座ってる美登里先輩と目が合った。
銀行に行ったんじゃなかったのか。
「まったく。穏やかじゃないなあ……」
迷惑そうに、聞こえるように呟く。
いいや、放っておこう。
美登里さんに、電話をつないでもらったから、誰からの電話なのかしっかりバレてる。
「何でもないです。本当に、同期でじゃれてるだけですから」
私は、わざとらしく作った笑顔を美登里さんに向けた。
「沢井君だよね?営業のエースと何かあった?」
「ないですよ。何も」
とぼけて答えた。
普段なら、もっともらしいこと言ってジョークでごまかすのに。
反応が薄かったかな。
ちょっと、わざとらしく見えたかも知れない。
何かあったからこそ、何も言えないのだけど。
嘘がバレてしまうから。
私は、美登里先輩の顔から
手元の分厚いファイルに視線を移した。
もう、省吾に関わるとろくなことがないんだから。