クールな同期が私だけに見せる顔

「ちょ、ちょっと待ってよ。
こっちに来てもらっても、無駄だから……」

「分かってるって。俺が勝手に行きたいと思ってるだけだから。
無駄足になってもいいんだ」

「それじゃあ、勝手にすれば……」
「ん、そうする。じゃあな……」

電話を切った後、隣に座ってる美登里先輩と目が合った。
銀行に行ったんじゃなかったのか。

「まったく。穏やかじゃないなあ……」
迷惑そうに、聞こえるように呟く。

いいや、放っておこう。

美登里さんに、電話をつないでもらったから、誰からの電話なのかしっかりバレてる。


「何でもないです。本当に、同期でじゃれてるだけですから」

私は、わざとらしく作った笑顔を美登里さんに向けた。

「沢井君だよね?営業のエースと何かあった?」

「ないですよ。何も」
とぼけて答えた。

普段なら、もっともらしいこと言ってジョークでごまかすのに。
反応が薄かったかな。
ちょっと、わざとらしく見えたかも知れない。

何かあったからこそ、何も言えないのだけど。
嘘がバレてしまうから。

私は、美登里先輩の顔から
手元の分厚いファイルに視線を移した。

もう、省吾に関わるとろくなことがないんだから。
< 26 / 220 >

この作品をシェア

pagetop