クールな同期が私だけに見せる顔
「あれ?晴夏ちゃん」
いきなり腕をつかまれた。島村課長と一緒にいた同期の横山君だ。
「なに省吾に用事?ちょっと待ってね」
嫌な予感がした。
「おーい!沢井!お前の彼女迎えに来たぞ」
フロア中に聞こえるような、でっかい声で横山君が言い放った。
横山君!何い出すの?
いつものダミ声で、私の名前を連呼する。電話中の彼が振り返った。
省吾は、電話を切って、振り返った。
こっちを見て、何かつぶやくとこっちに向かって何歩か近づいた。
「晴夏、なんだ?わざわざ、ここまで来てくれたのか?」と彼が言う。
「いえ、違います」
私は、彼に追いつかれないように後退りする。
彼は言い終わらないうちに、すでにこっちに向かっていた。
なんて長い足。
むかつくことに、彼の方がすぐに追い付いた。
省吾は携帯をカバンに放り込んで、すでに目の前にいる。
こっちに来る前に、横山君が言ったこと、否定して欲しいんですけど。
省吾が、私のところまでやって来た。
「ちょっと、何で私が、あなたの彼女になってるのよ」
わたしは、すぐに否定して欲しくて言う。
「否定するって。いちいちそんな事で否定しないさ。そんなことしたら、周りに余計に怪しまれるだろう?」
「しらばっくれないで」
「横山の言う事なら、いつもあんな調子だって。いちいち相手にするな。放っておこう。
今さら。あいつはいつも、あんなこと言ってるだろう?」
「みんな見てるじゃないの」
「いいから、いいから。
そんなことより、晴夏、何食べる?」
「何って……」
私は、なぜかご機嫌な省吾に、腕を回されて、彼に背中を押し出されるようにフロアを出た。