クールな同期が私だけに見せる顔



「省吾、ちょっと待って」
私は、彼から体を離そうとする。

省吾の腕の中に、どこまでも落ちていきそうで怖くなる。

つっかえ棒みたいに腕を伸ばしたところで、今さらどうにかなるわけじゃないけど。


彼は、離すまいと余計に強く私を抱きしめる。

「晴夏、そばにいないやつのことなんか、いい加減に諦めろよ」


「諦めろ?なにを諦めるのよ」
そばにいないやつのことって誰?


諦めるんじゃなくて。

どうしたらいいのか考えなくては。

やられっぱなしだ。省吾の思うまま。

省吾の言われるままに、服を脱がされて彼に抱かれてるなんて。

こんなのいいわけないもの。
彼は気まぐれだ。

こんな天国みたいな世界がずっと続くのか分からない。
こんなにも、彼にのめり込むのは良くない。


省吾の舌が、どんなふうに感じるのか。
彼がどんなふうに女性を抱くのか。

本当は、知らない方がよかった。


この世の中に、省吾だけしかダメだなんて思う前に、彼から逃げなくては。

記憶に残らないうちに、彼から遠ざかるべきなのだ。

他の男性を受け入れられなくなる前に。



省吾と本気で付き合うなんて、無謀なことだもの。

彼に従順になればなるほど、彼の心は冷めていって、そのうちに遠ざかっていく。

彼のこと好きになって、舞い上がって、どうしようもなくなるって時に、
彼の態度があっさりしてきたことに気が付く。

悲しいけど、彼のことを好きになればなるほど、あいつは相手の女の子に対する態度も冷めてくる。どうしようもないやつなのだ。

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