クールな同期が私だけに見せる顔
「頼むよ」

「あの課長、頼むよ、と言われましても。どういうことか、先に課長の方から説明していただけるんでしょうか?」

「いいや。それはまだ、出来ないんだ。それに、今すぐに話すつもりはない。けれど、君が教えてくれたことを、彼女に何か言うつもりはないから」

「そうですか」

「本当は、こっちでやらなければならないんだけど。席が離れてるし、君の方が警戒しにくい」

「はい、でも……」

二人だけで仕事してるのに、外出してる時間計ったりしたら……

私がやったことだって、美登里さんにバレませんか?


「大丈夫、上手くやるから。約束するよ。それに、君に頼んだことを彼女に話つもりはないから」

「はあ」あまり気が進まない。

「こっちも、具体的に起こってることを正確に知りたいだけなんだ。だから、誰かをだますわけじゃない。安心して」

「はあ」

「それでね。一週間だけでいいんだ。席にいない時間だけメモしておいてもらえれば」

「はい」



「ところで、俊介は元気?」

「はあ?」

驚いて、目を見開いた。

「君たち、付き合ってるんだろう?結婚も近いって聞いてたのにな。
あいつも転勤だなんて」

「ん?えっと」

「ああ、俺、俊介のことよく知ってるんだ。前に一緒に仕事したことがあって」急に握手を求められた。

拒否するわけにはいかないから、握手に応じた。

「あいつ君と離れて、結構こたえてたぞ。
もうすぐこっちに来たら、会えるから元気出せって励ましておいたけど」

「もうすぐ会えるって?」

「あれ、知らないの?俊介のやつ、来月こっちで研修会がある」

「そうですか……」

えっと……

今は、俊介さんとは付き合ってなくて……
課長のところの部下とお付き合いしているのですが。

なんて言えない。



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