強引社長の不器用な溺愛
「はい」


社長は答え、私を伴い座卓につく人々の間を悠々と進む。

途中、小さく「東弥!」と呼ぶ女性の声を聞いた。
私が横目で見ると、60代に届くほどの着物姿の女性が社長を驚いた顔で見上げていた。
横にいる同じくらいの男性と、30代と思しき若い男性。
若い方の男性は、社長と面差しが似ている気がした。

もしかして、社長のご家族?
それじゃこの会は……。

社長は呼ぶ声に振り向かず、老齢の女性の前に立つと、恭しくひざまずいた。


「大お祖母様、ご無沙汰しております。遅くなりまして、申し訳ありません」


おおおばあさまだぁ!?

ってことは、やっぱりこの会は一族の新年会?
しかも、すんごい資産家一族と見たよ!

私は勢いよく社長の顔を見た。
しかし、社長は私も無視し大オバアサマと話し始める。


「お元気そうで何よりです」


女性はひざの温かそうな毛布をちょいと細い指で持ち上げて見せる。


「あんたねぇ、ひざ掛けを送ってくれるより顔を見せにいらっしゃい」


「すみません。婆様孝行が足りませんね」


社長のひいおばあちゃんってことは今おいくつなのだろう。
目の前にいる小柄な女性は足が弱いらしく椅子に座っているものの、若々しく喋り、凛とした目をしている。

80代?いや、もっと上のはずなんだけど。


「私の可愛い末の曽孫は、そろそろ玄孫でも見せてくれる気になったのかい?」


大お祖母様が私をじろりと見つめ、私はすくみ上った。眼力がすごい。
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