強引社長の不器用な溺愛
「ははあ、綺麗なお嬢さんを連れてきたね。おまえにしては上出来だ」


大お祖母様は感心したように言う。
お褒めの言葉だけいただいておきますが、曾孫の嫁は、現在大パニックです。


「身を固めるってことは、“さこた屋”に加わる気になったのかい?」


ふっと笑って大お祖母様が言った言葉が耳についた。

さこた屋?
それって、銀座とか日本橋にあるさこた屋デパートのこと?

門扉にあった表札が浮かぶ。硲田……さこた屋。

もしかして……私が足を踏み入れた社長のご一族って……老舗百貨店の経営者一族!?

私のパニックが極地に至りそうになった時、社長がのんきな声で答えた。


「いやぁ、すみません。俺はやっぱり今経営してる自分の会社が大事です。絹に会えたのも、会社のおかげだし」


「そんな小さい会社、とっととお友達に譲っちまいな。おまえが幸弥(ゆきや)に“着物のさこた”を譲った時から、私はこっちに来てくれると思っとったんだがね」


険があるというより、皮肉っぽく大お祖母様が言い、社長は平気な顔で微笑んでいる。
少し考えるように間を空け、周囲の注目を一手に集めてから、社長は言った。


「絹の実家は、長野で旅館をやってるんですよ。万が一、会社を友人に譲るとしたら、絹の家族を手伝わなきゃならなくなった時ですかね」


なんでそれを知ってるの?
叫びそうになった言葉を飲み込む。
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