強引社長の不器用な溺愛
私は自分の実家の話なんてしたことはない。
敬三さんだろうか。ああ、そうに違いない。

なんで、そういうこと喋っちゃうのかなぁ!

旅館と言ったって、冬はスキー、夏は大学生の合宿に使われるようなお安めおんぼろ旅館なんだから!
クールビューティーキャラと合わないから、絶対言いたくなかったのに!!


「そうかい。ま、まだあんたは若いからね。気持ちも変わるさね。聡明な嫁さんなら、おまえの道しるべにもなってくれるだろうさ。結婚に関しちゃ、婆は何も言わないよ。おめでとう。……絹さん」


大お祖母様が私を見る。
眼光の鋭さにたじろぐけれど、適当にニコニコという社長の指示が思い浮かぶ。


「はい」


かすれずに出た声。落ち着いた微笑を精一杯浮かべる私。


「東弥はちょっと馬鹿だが、可愛い子でね。あんたは賢そうだから、よろしく頼むね。捨てないでやっておくれよ」


私は誠心誠意をこめて頷いた。


「はい。こちらこそよろしくお願いします」


嘘の緊張感で眩暈がした。



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