強引社長の不器用な溺愛
その後、私は社長のご家族の隣で会食のお膳をいただくこととなった。

もう正直味なんかわからない上に、社長のお母様がまあ様々なお話を振ってくださるのだ。

『いきなりで驚いたわ』
『でも、東弥にいい人ができて嬉しい』
『まあ、ご実家は旅館なのね』
『結婚式については何かご希望はある?』
『東弥の実家の家業はご存知よねえ』

元々話好きな方である様子で、さらには次男のお嫁さんに初体面とあって、多少緊張から多弁なのだろうと感じられた。

私は社長の指示通り、曖昧かつ感じよく相槌を打ち続け、どうしても困った時は横の社長をちらりと見た。
助け舟は一応出されたものの、お母様のトークは止まらず、根本的な解決にはならないあたり。

お母様のお隣がお父様、その隣にいるのがお兄さんの幸弥さんだそうだ。

東弥が嫁を連れてきたと大お祖母様は上機嫌で、一族の皆様の視線も痛いほど感じる。

全部嘘なのに。
視線が苦しい。も・もうそろそろ限界かも……。

そう、思った時、社長が立ち上がった。
私の手を引き、大お祖母様の前に再び推参すると、暇乞いをして踵を返す。
その間、ほんの30秒ほど。

一族の皆様の視線の中、私は社長に手を引かれ、広間を退場することとなった。
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