強引社長の不器用な溺愛
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「ありゃ、大ばあちゃん気付いてたな」
敷地を出るなり、社長が天を仰いで言った。からっと明るく。
私は信じられない気持ちでその背中を見つめた。
あんた今さぁ、何しでかしてきたかわかる!?
なんでそんなに清々しい顔してんだよっ!
「私はいつから八束社長の婚約者になったんですか?」
怒りを滲ませ、低く唸ると、前を行く社長がくるりと振り返る。
「今日この場でめでたく婚約しました」
「クソくだらない冗談はやめてください」
社長は動ずることなく、微笑んだまま短い髪をかきあげる。
「……毎年この新年会の度に、大ばあちゃんと母親に結婚はまだかって言われ続けて、辟易してたんだよな。で、今年はもう文句言わせねーぞっていうサプライズを……」
「私にとってもサプライズでしたよ!!」
私はとうとう怒鳴った。
「なんなんですか!?社長がなんだかすごいご一族の出身なのはわかりましたけど、なんで私が婚約者役に祭り上げられなければならないんですか!?大勢のご親戚の前で、あんな大ボラ吹いて!百歩譲って、ご高齢の大お祖母様を安心させたいなんて気持ちならわかりますが、バレバレな嘘なら意味ないじゃないですか!今すぐ訂正してきてください!!す・ぐ・に!!」
「おまえ、長セリフだなー!よく覚えた!えらい!」
一気呵成に責め立て肩で息をしている私。
楽しそうにケラケラ笑っている社長。
暖簾に腕押しってこんな感じ?私の怒りは増す一方だ。