強引社長の不器用な溺愛
「本音を言ってください」


「なにが?」


「たくさんの人をからかうようなことをした本音です。あなたが何もなくやるわけない」


私のドスの効いた詰問すら、社長は笑顔で受け流す。


「買いかぶりすぎ。そうだな、強いて言うなら可愛い仕返しかな」


仕返し。その言葉が存外重たく響く。可愛いなんてつけても意味がないくらい。


「仕返し?」


「百戦錬磨の美女にからかわれた仕返し」


社長が近づいてきて、私の唇に親指で触れた。


「乾燥してる。緊張してたからか?リップ塗っとけよ、美人秘書」


大きな手を振り払い、そこでハッとする。
百戦錬磨の美女を指すのが、私だとようやく理解したのだ。

社長のこのタチの悪いドッキリは……出張の夜の仕返しなんだ。
社長にしてみれば、誘っておいて馬鹿にして逃げた私を許せるわけがなかったんだ。
表面上、普通を装って、裏でこんなあくどい仕返しを画策していたなんて。

ああ、結局私が悪い。
彼みたいな男がプライドを傷つけられて黙っているはずがなかった。

だけど、こんな方法しかなかったの!?


「あなたの自尊心を傷つけたのは、私がいたらないせいです。本当に申し訳ないと思っています。だけど、このやり方は最低ですよ」


後悔、申し訳なさ、その100倍くらいの怒り。

私だけならまだしも、何人巻き込んでんのよ!この馬鹿!
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