強引社長の不器用な溺愛
「社長のお母様は完全に信じているんですよ!どうするつもりですか!?」


「ほとぼりが冷めた頃、家族には言うさ。親戚連中ならいい。若い男女の婚約がばらけるなんて、よくある話だ。大ばあちゃんは気付いてるからなぁ。言い訳も不要だろ」


「事はそんなに簡単とは思えませんけど?軽はずみ過ぎます!」


「ははは、軽はずみにキスなんかしたからかなぁ。こんなに軽い男になっちゃったのは」


社長は私に皮肉を言い、まだにやにや笑っていた。


「私が……キスしたからですね」


怒りが臨界点に近く、言わなくてもいい言葉が出てくる。
やめとけ、と思いながら止められない。


「都合よく遊べない女ですみませんでした!社長に復讐されても、私に文句を言う資格はないのかもしれません。でも……」


最低な社長と、同罪なくらい嫌な女・私。

一度言葉を切って、睨んだ。


「今日は、もう顔を見たくありません。失礼します」


「明日は通常通りだから、よろしく」


社長のまったく堪えていない言葉を背中で聞きながら私は坂を下る。
後楽園の駅を通り過ぎ、水道橋を目指す。帰り道まで社長と被りたくなかったからだ。各停で帰ろう。

なんて、タチの悪い男!
そして、私の大馬鹿!

キスなんて、しなければよかった!
嘘になんて加担しなければよかった!

いろんなことがままならなくなって、私たちの関係もぐちゃぐちゃ変化してきて。

新年早々、どうすりゃいいのよ!

ああ、心身ともに禊したい!
明日は休み取って、滝行にでも行ったろうかしら!



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