強引社長の不器用な溺愛
私がアワアワと焦っているうちに目的のお店は目の前。


「こっ……ここです!最近できたばかりなんですけど、美味しいって評判なんです」


私は雑誌で調べまくったお店を、さも知っているかのように案内した。
席に着くと、最初から決めていた通り簡単なコースを頼む。

初対面の人の好みを聞きながら、どのくらい食べられるかもわからず、大皿をとりまくるのは恐怖だ。シェアする気遣いや手間も。
面倒とか言うより、緊張感と微妙な距離感が歯がゆいのだ。

なにしろ、私は友達が少ない。
最近遊んでくれるのは沙都子さんと衿奈ちゃんくらいだし、大学時代の友人はほとんど地方に戻っちゃってるし。
こっちにいても、子育て始めました!みたいな状態で、時間が合わない。

そうすると、飲み会や食事会に誘ってくれる友人はほぼゼロ。
仕事以外で他人とご飯っていうのが極端になくなってくるわけよ!

今日だって仕事の延長とはいえ、一応はメンズと二人きりだし、あまり気を遣い合いたくない。

イタリアンを嫌いな人間は少ないはず!と決めたんだけど、清塚さんは好きだって言うし。
うんうん、いいチョイスだぞ、私。
飲み物を聞かれ、赤ワインをフルボトルで一本頼む。


「篠井さんは、信州のお生まれでしたよね。やはり雪は多いんでしょうね」


清塚さんが口を開く。
無口なタイプなのかなと思っていたけれど、二人きりになると割と喋る人だ。
出張の最後までわからなかったけれど。
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