強引社長の不器用な溺愛
しらーっと冷たい表情で、『周りにうつすなよ。迷惑なんだよ』的雰囲気が伝わってきて。
さらには『おまえの顔、別に見たくないから』的邪推もしてしまいそうで。

私はキーッと怒り出すのを飲み込み、ささーっとマスクをしたんだった。

ああ、いい加減この嫌な感じを終わりにしたい。
今週の社長、なんだかツンツン系じゃない?

清塚さんとごはんに行った件は、なぜか堂上さんに首尾を聞かれたけれど、もしかしてそのあたりが社長としては面白くなかったりします?

なんだよ、社長じゃん。
繋ぎ止めとけって言ったのはさ!
楽しくイタリアンしてきたっつうの!


時刻は18時半。
吉祥寺の駅前はいつも通り混み合っていた。

寒空の1月、陽射しがないから余計凍てつく風が喉につらい。
今日の外出はお客様の忘れ物を届けに日本橋まで行ってきた。
風邪っぴきにはツライ寒空外出ですけどね。
マスクをし直して、会社に戻るため歩き出す。


「あの、すみません」


会社の真ん前までやってきたところで、声をかけられた。
振り向くと、スーツ姿の細身の男性が立っていた。

え?何者?
ただのサラリーマンっぽくも見えない。
というか、私、この人をどこかで見かけたことがあるような……。


「篠井絹さんですよね」


フルネームで呼ばれ、焦る。
え?ホントに誰だっけ?
< 154 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop