強引社長の不器用な溺愛
とか言って、まったく知らない人だったら怖いから、怪訝そうに答える。


「ええ、そうですが」


「私は八束東弥の兄です。先日の新年会でご挨拶だけしました……」


「あ!ああっ!お兄様ですね!!」


心底慌てた。ようやく思い出した。
新年会でお会いした社長のお兄さんだ!確か幸弥さん。


「えーと、幸弥さん……。はっ東弥さんに御用ですか?たぶん社内にいるので、ご案内しますよ」


私が突っかかりながら、案内しようとすると幸弥さんが片手で制した。


「いえ、今日はあなたに会いに来ました」


静かだけど有無を言わせない決意を持って、幸弥さんの声は響いた。
私はびくびくと頷き、ひとまず会社の前から離れることにした。


吉祥寺駅に戻る格好で歩き、チェーンのコーヒーショップに入る。
帰宅前のサラリーマンや、デートのカップルで店内はにぎわっていた。

コーヒーとロイヤルミルクティーで向かい合う。
意外にもミルクティーにオーガニックシュガーを二本入れているのは幸弥さんの方だ。


「絹さん、とお呼びしてもいいですよね」


「もちろんですよ!幸弥さんはお兄さんなんですから!」


声が引きつっているんじゃないかと不安になる。
ああ、いつか社長が本当のことを言ったあかつきには、改めて謝罪させていただきます。


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