強引社長の不器用な溺愛
「東弥が高校2年で進路を決める時、『美術系の大学に行きたい。将来はその方面で仕事をしたい』と言い出しました。義母は大反対しましたが、東弥は聞かず進学。そして、父に話をつけて資金調達をし、八束デザインを立ち上げてしまいました。それもすべて私のためです」
「幸弥さんのために?」
「ええ、東弥は私に“着物のさこた”の後継者の座を譲るため、出奔したのです。一度だけ東弥が言いました。『会社は兄ちゃんに任せたい』と。妾腹で、一族に居場所のない私に、なぜそこまでしてくれるのかと問いました。東弥は言いました。『兄ちゃんなら会社をもっとでかくできる。兄ちゃんの力を、親戚連中に見せつけてやりたい』って」
幸弥さんにそう言い切った若い社長の姿が浮かぶ。
そんなことを考えていたんだ。
それじゃ、この前のウソ婚約発表は……。
幸弥さんが再び頭を下げた。
「東弥が一族の集まりで絹さんを巻き込んで婚約発表したのは、“着物のさこた”を継ぐ余地がないというアピールです。絹さんのご実家の話を持ち出したのもそのためでしょう。東弥は、私の地位を確立するために、あんなことをしました。どうか許してください」
「幸弥さん、頭を上げてください」
「曽祖母とも話してきました。曽祖母はすでに気付いていましたが、東弥を責める気はないそうです。優しい子だからと笑っていました。義母や父、あとのことは私が始末をつけます」
幸弥さんだって優しい。私はそう思う。
境遇を恨まず、謙虚で、腹違いの弟を本当に大事に想っている。
こんなお兄さんだから、社長は居場所を作ってあげたかったんだと思う。
「幸弥さんのために?」
「ええ、東弥は私に“着物のさこた”の後継者の座を譲るため、出奔したのです。一度だけ東弥が言いました。『会社は兄ちゃんに任せたい』と。妾腹で、一族に居場所のない私に、なぜそこまでしてくれるのかと問いました。東弥は言いました。『兄ちゃんなら会社をもっとでかくできる。兄ちゃんの力を、親戚連中に見せつけてやりたい』って」
幸弥さんにそう言い切った若い社長の姿が浮かぶ。
そんなことを考えていたんだ。
それじゃ、この前のウソ婚約発表は……。
幸弥さんが再び頭を下げた。
「東弥が一族の集まりで絹さんを巻き込んで婚約発表したのは、“着物のさこた”を継ぐ余地がないというアピールです。絹さんのご実家の話を持ち出したのもそのためでしょう。東弥は、私の地位を確立するために、あんなことをしました。どうか許してください」
「幸弥さん、頭を上げてください」
「曽祖母とも話してきました。曽祖母はすでに気付いていましたが、東弥を責める気はないそうです。優しい子だからと笑っていました。義母や父、あとのことは私が始末をつけます」
幸弥さんだって優しい。私はそう思う。
境遇を恨まず、謙虚で、腹違いの弟を本当に大事に想っている。
こんなお兄さんだから、社長は居場所を作ってあげたかったんだと思う。