強引社長の不器用な溺愛
「仲がいいんですね」


「いえ、私が勝手に東弥に感謝しているだけです」


「社長……東弥さんは今の会社で本当に伸び伸びと仕事をしています。きっと、幸弥さんがいたから、東弥さんは自分が活かせる世界を見つけられたんだと思います」


私の言葉に、幸弥さんがまた困ったように笑う。


「それでも、東弥の人生を歪めてしまったように思えてなりません」


「そんなことは、ないです」


私ははっきりと言い切る。


「だって、私は東弥さんの元で働けて、毎日楽しいですもん。他の社員だってそうです。社長があの会社を作ってくれなかったら、出会えませんでした」


それは本音だ。社長が作ってくれた八束デザインが、私たちの船。
居心地がよくて、波に負けなくて、風を味方にするのがうまくて。そうして水平線に向かって進んでいく。

私たちは、あの退屈とは程遠い会社の一員で、最高に幸せなのだ。

幸弥さんが嬉しそうにため息をついた。


「絹さんが本物の婚約者ならよかった」


「え!?」


思わぬ言葉に焦る私をよそに、上品に微笑んだ幸弥さんが言った。


「あなたが東弥を愛してくれたら、私はもう何も心配しないのに。……ふふ、勝手なことを言いました。忘れてください。兄バカなんです」


兄バカですか。
でも、ものすごく自分が赤い顔をしているようで、恥ずかしいです。
なんか、期待してる風に見えたら困るなぁ。

幸弥さんと私はコーヒーとミルクティーを飲み終え、連絡先を交換して別れた。




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