強引社長の不器用な溺愛
俺は篠井に目配せして、せーので清子を持ち上げた。
空中で足をバタバタさせて、清子がかん高く笑う。


「もう一回!もう一回!」


終わるなりせがむ清子は生意気な口をきいたって、まだまだ幼児だ。
ふふん、単純な遊びに夢中になりおって。雑作もないわ、お嬢ちゃん。


「ほら、もう駅に着くぞ」


「やだぁ、もう一回!」


俺と篠井は帰宅する人たちを避け、もう一回、清子をジャンプさせる。
こちらも笑ってしまうほど、清子はきゃあきゃあはしゃぐ。

そうか、この『ぶーらんこ』なる遊びは大人が二人揃わないとできないんだ。
清子は沙都子さんにお願いできないことを俺たちにせがんでるんだ。

しぶとく「もう一回!」を繰り返す清子が可愛くて、俺と篠井は清子を三たび持ち上げる。


「なんか家族みたい」


篠井がくすくす笑いながら言う。

その言葉にどくんと胸が鳴った。

ホントだ。俺たち、家族みたいだ。
父親と母親とひとり娘って感じ。

なんか、妙な感動を覚える。
うちの両親は親父の愛人問題なんかもあったし、仲が良いとは言えなかった。
兄貴が来てからは、やっと家族っていいなって思えるようになったけど、それまで家はつまんない場所だった。

幸せな家庭を築きたいなんて思ったこともなかったけど、清子を見てると人並みに子どももいいなぁなんて考えてしまう。

つうか、今、母親役を務めてる篠井がなんか自然なんだよ。
こうして、俺と篠井の間に子どもがいる図って、すごく有りに見えないか?

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