強引社長の不器用な溺愛
「そうなんですよね。さやちゃん、顔は沙都子さんに瓜二つなんですけど、イエローグリーンの目がパパの遺伝なんですって。沙都子さんは『よりにもよって一番目立つところが似ちゃったわ』ってプリプリしてましたけど」


「結婚しないんだな」


「色々あるみたいですよ。恋愛は本人たちにしかわからないこともありますから」


篠井が口をとがらせてこなれたことを言うので、俺は思わず吹き出す。

最近、ちょいちょい化けの皮がはがれてきてるんだよな、この大人女子。


「さすが、恋愛経験が豊富だと、言うことが違いますね、篠井先生」


「ま……そうですね。ええ」


微妙に焦っているのがわかってしまう。

ああ、こいつのこういうとこが可愛いって、気づいちまった。
まずい、まずい。


「なあ、メシの予約しちゃったんだろ」


俺はわざとらしく話を変える。ちょうどやってきた電車に乗り込みながら。
篠井がスマホでお店情報を見せてくる。


「ここなんです。美味しいって人気のビストロ。せっかく食べに行けるチャンスだったのに」


清子をダシにおごらせる気だったな、こいつ。
まー、いいけど。急な仕事を頼んだ時、メシおごるとか約束した気がするし。


「あのさ、今日は沙都子さんに悪いからキャンセルしよう。でさ」


「明日、予約し直して一緒に行きませんか?」


俺が言おうとしていた言葉を、篠井が口にした。
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