強引社長の不器用な溺愛
見れば、篠井は少しだけ上気した頬で俺を見つめてる。
それって……おいおい、こっちも誤解するぞ。いいのか?


「俺もそう言おうと思ってた」


「気が合いますね。以前のオゴリの約束を果たしてもらいます」


そうそう、オゴリの約束のためな。
だけど、おまえからそんな誘いを受けたら、俺も嬉しいんだよ。


「じゃあ、明日」


「ええ、明日。残業しないでくださいよ」


「わかってるっつうの」


吉祥寺に着くと、残ってる連中に差し入れを買って帰ることにした。

会社とは反対側の出口から出て、ふたりでハモニカ横丁を突っ切る。
小さな老舗の和菓子屋で、まだ売り切れていなかった最中を購入。
ここは羊羹が有名だけど、最中だってうまい。

自分も食べる気満々のほくほく顔で、最中の箱を持つ篠井を横目に、俺は考えた。

明日、篠井と食事。

約束を果たすためとはいえ、ふたりで食事だ。


ここまで考えてきたことがある。
篠井の気持ちは一度横へ置いて、俺の気持ち的な問題。

篠井に言おうか。

『清塚さんと付き合うのは、やめとけ』

これはあくまで俺サイドの意見で要望。

篠井が清塚さんにすでに気持ちがあるなら、こんなこと言っても困らせるばかりだろう。
せっかく、今お互いの関係がいい距離の時に、イブみたいな失敗はしたくない。
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