強引社長の不器用な溺愛
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1月某日の木曜日。
つまり、今日はちょっとした勝負だ。
安野産業内のミーティングルームで、俺は敬三さんと打ち合わせをしながら思う。
篠井と約束をしたのは今夜。
ふたりでおしゃれなビストロでメシだ。
少しだけ本音を喋って、篠井の様子を窺うという、思ったよりコスイ手でトライしてみる。
うまくいきそうならそこから踏み込んでいけばいい。
ああ、俺ってこういう臆病なキャラだっけ。
でも、恋愛に関しちゃ、生駒の件しかり結構硬派で真面目なんだよな。
我ながら歯がゆいほどに。
篠井が挑発的に近寄ってこなければ、俺はしばらくぶりに誰かとキスすることもなく、今こうして悩んでいることもないのだろう。
「おい、東弥、おまえ聞いてるのか?」
敬三さんが不審げに俺を覗き込む。
「聞いてますよ。例の大沢キノコ農園、ゴーサイン出てるんでしょ?明日、堂上たちも連れてくるんで、そっちの特販部と会議やりましょう。代理店の仕事も特販部がやるんでしょ?中にどこも挟まないっすよね」
「それはいいんだけど、どうもクリエイターズフォレストの動きがクサいんだよ」
あー、副社長の奥様とべったりの広告代理店ね。