強引社長の不器用な溺愛
俺は勿体ぶって、のんびりと簡易応接に顔を出した。
後ろには篠井が控え、俺がソファにつくと、横にちょこんと座る。


「お母様、こんにちは」


篠井が先に微笑んだ。


「母さん、どうしたんだ?こんなところまで」


俺はソファにふんぞり返って、後ろめたいことなんかイッコもないという余裕の表情で母を見た。

母は思いつめたような顔をしていた。
鬼気迫るというか。もともと顔立ちがはっきりしているから、化粧と相まって迫力がある。


「母さん?」


俺が問いかけると、母がぎりっと俺を睨んだ。
怖ぇぇ、母ちゃん、怖ぇぇ。


「東弥、絹さん!私はお祖母様に会ってきましたよ!」


「え?」


「あなたたちの婚約は、おそらく嘘だと、お祖母様は言うんです!今日はそれを確かめに来たのよ!」


篠井が慌てた顔をしたのは、母の声がでかかっただけじゃない。
ちょうどお茶を運んできた土屋が、驚愕の表情でその言葉を聞いていたからだ。


「お母様」


篠井は落ち着きを取り戻し、土屋がパーテーションから出て行ったあとに答える。


「東弥さんとは結婚を前提にお付き合いさせていただいております」


「大ばあちゃんに何吹き込まれたかしらないけど、俺と絹は本当に結婚するつもりで付き合ってるよ」


俺も加勢するけれど、母は首を振るばかり。


「東弥の魂胆はわかるわ。幸弥に“着物のさこた”を継がせたいから、そんなことを言っているのでしょう」


正解。
だけど、ここは俺も譲れない。
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