強引社長の不器用な溺愛
「……タバコ、吸うんですね」


俺が清塚さんを発見したのは、間もなくのこと。
ホールのある3階から、ひとつ下った2階の喫煙室だった。

予想的中。清塚さんと飲んだのは、あのクリスマスパーティーだけだけど、飲みながら手持無沙汰そうに指でテーブルを叩いていたのを覚えている。
また、打ち合わせで入ったラボ、彼のデスクには匂いを消すガムがボトルで置いてあった。

喫煙習慣があるならと思って、ホテルの喫煙所を当たっていたのだ。
案の定、今日は人の出入りの少ない下の階の喫煙所にいたってわけ。

清塚さんが俺の顔を見ると明らかにぎょっとした顔をした。


「喫煙、周りには言ってないとか?健康増進事業の手前、隠してるんですか?」


「八束さん……ですよね。どうも」


清塚さんはわかりやすく敵意を示した表情で、俺を見据え、タバコをゆっくりともみ消した。
たぶん、俺の顔を見た瞬間、自分の状況がわかったんだろう。
もしかすると、自分の恋敵の正体も。


「偶然ですか?こんなところでお会いするなんて」


それでも白々しくとぼけるこの男。


「いえ、清塚さんがこちらだと伺って、追いかけてきました」
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