強引社長の不器用な溺愛
「大人げないでしょう?でもね、僕、本当にあなたを好きになってしまったんです。だから、この程度の復讐をしたっておかしくはない。あなたのミスです、篠井さん。あなたは僕を振るタイミングを間違えた」


清塚さんの長い指が俺を指し示す。


「八束さんがあなたの想い人なんでしょう?」


今度は篠井が俺を守ろうと一歩踏み出す。
やめろ、おまえは下がってろ。


「そうだ、挽回のチャンスをあげますよ。篠井さん、今すぐ八束さんを振って僕と結婚を前提に付き合ってください」


「はァ?何を?」


俺は剣呑に言い返す。
しかし、かなり切羽詰まった様子の清塚さんに、こちらの怒りは通じてはいないようだ。


「篠井さん、僕を選ぶなら、僕はあなたを裏切らない。今から、大沢社長側に戻ります。安野産業と八束デザインで、このプロジェクトを進めます。僕にはそれだけの裁量権がある」


たかが開発責任者だ。まさか、そこまでの権限があるとは思えない。

しかし、彼が研究開発の中枢である以上、存在に価値が高いことは容易に想像がつく。
だからこそ、俺たちは説得にきたのだ。

篠井がひゅっと息を吸い込むのがわかった。

バカ、変なことを口にするな。
俺は真横の篠井の肩をぐっとつかみ、引いた。
一歩前へ出直す。言葉は自然に口から溢れた。


「させるかよ、ハイスペック草食系」


最初にこの人につけた“ハイスペックくん”というあだ名がこんな時に出てきてしまった。
本当は、悪態をつくつもりだったんだけどな。
まあ、呼び方はなんでもいい。

ここで言いたいことを言わなきゃ、俺のいる意味がない。

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