強引社長の不器用な溺愛
「じゃあ、付き合うかとか……ならないわね。あなたたちふたりじゃ」


「へぇ、そうですなぁ」


私と社長の小学生男子レベルのやりとりは、社内のみんなが知っている。
本人以上に、周りが知っているのだ。
八束&篠井に恋愛感情は皆無だって。異性であることすら忘れてるって。


「終わったことなら、忘れるべきよ。絹さんは、キスも初めてだったの?」


娘の清子ちゃんがいる前でさらっと大人トークの沙都子さん。
清子ちゃんも気にせずオレンジジュースを飲んでいる。
意味がわかっているのかいないのか、不安だ。


「いえ、キスくらいは……」


おどおどと小声で告白する私に、沙都子さんが落ち着いた口調で答える。


「そう。キスもバージンも後生大事にするほどのものじゃないわ。誰とでも経験できるもの」


さすがモテ子(過去推量)!恋愛感がこなれてる!

つーまーり、
あんなキスひとつで動揺しまくっている私はベビーレベルっつうことですね!

やっぱりねー。うんうん、そうですよねー。


「バージンはね、あまり大事にしすぎると変な男に騙されちゃうんだから。いっそ、絹さん、社長と経験してみたら?」


私はぶはぁっとビールを吐き出しかけて、おしぼりで口を押えた。

いまのなにー?
沙都子さん、方針が突如ぶっ飛んだんですけれど、酔ってます?
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