蕩けるくらいに抱き締めて(続き完結)
…午後7時。蘇芳先生は帰り支度を始める。

「…もう、帰るの?」
「…用があるから帰る」

カバンを持った蘇芳先生は、足早に医局を出て行く。

「待って!」
「…」

出て行こうとする蘇芳先生の手を、薫子は掴んだ。

「…私を、秀明の恋人にして」

懇願するように見つめる薫子。…しかし、蘇芳先生は表情一つ変えない。

「…俺は、薫子、お前を愛せない。…他を当たれ」

キツイ言葉なのは、蘇芳先生自身分かっている。だが、ここで優しい言葉をかければ、薫子は益々勘違いしてしまう。

だから、蘇芳先生はあえて、キツイ言葉を放った。

…薫子は、掴んでいた手をそっと離した。

「…どうすれば、私の事、見てくれる?」
「…どんな事をされても、薫子の事は、見れない」

捨て台詞を吐き、蘇芳先生は医局を出て行く。

「…蘇芳先生」
「もう、俺の手には負えません…西川先生、薫子を助けてやって下さい」

…医局のドアの前、心療内科の西川先生が、蘇芳先生を呼び、蘇芳先生は、西川先生に助けを求めた。

…彼が、薫子をずっと想っている男だからだ。

「…私は、蘇芳先生の代わりになれるでしょうか?」
「なっていただかないと、困ります」

そう言うと溜息をついて、蘇芳先生は病院を後にした。
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