男の秘密
紙袋の中身は鴨ロースだった。

甘いものの苦手な羽奈の頬が緩んでいるのは、この為だったのかと思った。

優の作った酒の肴と一緒にテーブルに並べて、うち飲みが始まった。

二次会のダンスの話で盛り上がった後、忍との話しになった。

「羽奈、あのね。実は・・・」

言い出しにくかったが、今言わないとと思い、悪戯電話の話と、手紙の話をした。

「それってストーカーじゃない」

羽奈の顔が険しくなる。

少し考えるように口を閉ざした後、徐(おもむろ)に口を開いた羽奈が衝撃的な発言をした。

「話の内容からして、社内の人間じゃない?」

優も疑わなかった訳では無いが、まさか社内にそんな人間が居るとは思えなかった。

「でも・・・」

「社内で付き合ってる事が広まって直ぐに電話があったんでしょ?」

「それに、服装だって、社内なら分かるわ。もう一点、電話番号だって優のマンションじゃぁ盗み見する事は出来ないでしょ。」

郵便物から電話番号を知る事は、管理人常駐のこのマンションでは難しい。

「それはそうだけど。社内だって私の電話番号を知ってるのは総務と上司と同期位だと思うわ」

「その辺は、聞き出すことも可能でしょうけど・・・」

もし、社内だとしたら、日中見られていると思うと背中がゾクリとした。

「やだ・・止めて」

「まぁ、当分は出来るだけ忍さんと会わないようにして。私もこの件を調べてみるわ」

こちらの情報は筒抜けなのに、相手の情報が全く無いと言うのは考えただけで恐ろしい。

せっかく楽しかったうち飲みも、急に湿っぽくなってしまった。

「ごめんね。羽奈。せっかく楽しく飲む日だったのに・・・」

「何言ってるの。折角忍さんと付き合えるようになったんだから、もっと幸せにならないと!
大丈夫!犯人を必ず見つけ出すわ」

今まで一人で抱え込んでいた所為で緊張していた糸が切れたようで、優は泣き出してしまった。

「大丈夫。一人じゃないから」

抱きしめられて更に涙が止まらなくなってしまった優は、暫く羽奈に甘える事にした。
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